華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
山賊は、本当に私を人質に取ろうとしているのかもしれない。そんなこと、予想だにしなかった。

激しくざわめく胸を抑えるようにぐっと手を握っていると、お父様が深刻そうな表情の顔の前で手を組む。


「今日リルーナも同行するという情報を、どこからか仕入れていたんだな。やはり、外へ連れ出すべきではなかったか……」


彼は暗然とした声を吐き出し、私の心にも重い鉛が落とされたような感覚がした。

私がずっと城に閉じ込められていたのは、悪魔だけじゃなく、こういう危機から守るためだったんだ。それが今、身に染みてわかったから。

やりきれない気持ちで視線を落とすと、セアリエが少しの焦燥を滲ませつつも、落ち着いた声で言う。


「とにかく、すぐに姫様をかくまうべきです。籠城することは可能ですよね?」


それに対し、姉様は立ったまま難しい顔で問題点を指摘する。


「でも、リルーナだけ置いていったことがわかったら、いずれ彼らはどうにかして拉致しに来るでしょう。居場所が知られている限り、安全とは言えないわ。この城の住人も危険にさらしてしまうかもしれないし……」


姉様の懸念通り、私が隠れただけで彼らが引き下がるとは思えない。それに、この城に住む人たちまで危ない目に遭わせてしまうのは耐えられない。

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