華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「そこは本当に安全なのかい?」

「えぇ。港には海軍がおりますので、もしものときは共戦するよう声をかけておきます。念のため、彼女が姫だということは誰にも明かさずに。幸い彼女の顔は知られておりませんから」


セイディーレのしっかりとした受け答えで、お父様も小さく頷き、納得し始めたようだ。

さらに私たちを安堵させるように、彼は勇ましい眼差しで力強く宣言する。


「ご安心ください、私がついております。リルーナ姫には指一本触れさせません」


ドキン!と、こんなときにもかかわらず胸が鳴った。

ずっと私を遠ざけようとしていた彼が、今は私を守ってくれようとしているのだから。

セイディーレの様子を見ていれば、これは上辺の文句ではないことが明らかだ。別荘に行くとなれば、彼と行動を共にすることになるのだろう。

それはとても心強くもあり、少々不安でもある。逃げている間彼とずっと一緒だなんて、想像がつかない。

いろいろなことで心臓に負担がかかるよ……なんて思っていると、黙っていたセアリエがふいにこう問いかける。


「あなたが裏切らないという保証は?」


彼は探るような、試すような視線をセイディーレに向けている。さっきから、セアリエはいつにも増して用心深い。

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