華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
セイディーレが裏切ることなんてない。私はそう信じているけれど……。

反応が気になってセイディーレをちらりと見やると、彼はセアリエの発言をまったく意に介さず、わずかに口角を上げる。


「そのようなことがあれば、私の首を差し上げましょう」


冷笑を浮かべ、さらりとそんなことを口にする姿が異様で、私は背筋がぞくりとした。

裏切る可能性を否定してくれたのに、言い方が怖すぎますって。

黒の騎士様の威圧感もあってか、セアリエはひとまず納得した様子。

私も、自分はどうするかを言わなくちゃ。いつまでもこうしてはいられない。

ぎゅっとスカートを握り、皆を見回して口を開いた。


「私、閣下についてゆきます。それで、少しでも皆への危険が減るなら」


皆がなんとも言えない顔をするけれど、一番心配そうにするのは姉様だ。


「リルーナ……」


眉を下げ、ぽつりとこぼす彼女をこれ以上不安にさせまいと、私はにこりと微笑む。


「私は大丈夫。最強の指揮官様がいてくれるんだもの」


なるべく明るく言い、ちらりとセイディーレを見やると、彼も私と目線を合わせた。その瞳は“当然だ”と言っているような気がして、勇気が湧いてくる。

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