華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
私のそばに来た姉様は、堪らず私を抱きしめた。いつも安らぎをくれるぬくもりを抱きしめ返したあと、私は少し身体を離して言う。


「それより、姉様たちも本当に気をつけて」


城を出るときが一番危険なのだから、皆が帰るときのことが気にかかって仕方ない。

しかし、お義兄様は落ち着いた笑みを見せて、私を安心させてくれる。


「心配はいらないさ。頼もしい護衛もいることだし」

「そうですよ。なんのために、我々が日々訓練をしているとお思いです?」


セアリエも得意げな顔でそう言うから、少し気持ちがラクになった。

そうよね、ハーメイデンの騎士団もとっても有能だもの。山賊なんかに負けないわよね。

セアリエたちを信じよう、と気を強く持とうとしていると、お父様がスッと立ち上がった。セイディーレをまっすぐ見つめ、頭を下げる。


「セイディーレ閣下、娘をよろしく頼む」


一国の王が頭を下げているこの状況を、国民が目にしたら衝撃が走るかもしれない。お父様が心底私の身を案じていることの表れだと思うと、胸が締めつけられる。

それをしっかりと感じ取っているであろうセイディーレも、「お任せください」と真摯に答えていた。

これからの逃亡劇でなにが起こるか見当もつかないけれど、彼が一緒ならきっと大丈夫。

そう信じて、ついていこう。




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