華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
そこからはボートや船が泊まっている港と、沈む直前の朱い夕日が見渡せる。鼻をかすめる潮の香りと頬を打つ涼しい風が、とても心地良い。

興味津々で橋の手すりに近づくと、セイディーレも隣にやってきた。


「実際に見ると圧倒されるわね」

「海を見るのも初めてか?」

「えぇ。ハーメイデンにはないから」


さっきまでの緊迫感はしばし忘れ、穏やかな気持ちで海を眺める。

とろけそうな夕日が反射してきらきらと輝く広い水面が、こんなにも美しいものだったなんて。


「すっごく綺麗……」


感動しながらも、なんだか切なさを感じ、海を見つめたまま呟いた。

外へ出なければ危険もないけれど、この景色も見ることはできない。そう思うと、複雑な気分だ。

思いを巡らせていたとき、ふと視線を感じて振り向く。すると、私の目にはエメラルドグリーンの光が飛び込んできた。

こちらを見つめる彼の瞳には、なんだか情熱のようなものを感じて、ドキリと胸が鳴る。

なんだろう? いつも冷たい色を湛えている彼らしくない……。

< 111 / 259 >

この作品をシェア

pagetop