華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
そう思った瞬間、ぐいっと手を引かれ、バランスを崩した私はそのままセイディーレの胸の中へ。そうして、力強く抱きすくめられた。

えぇっ……なっ、なに? なんで抱きしめられているの!?

突然閉じ込められた腕の中で、私はパニック状態に陥る。


「っ、セイ、ディーレ……!?」

「よく聞け」


激しく波打つ心臓のせいで声が上ずり、身を固くすることしかできないでいる私の耳元で、言い聞かせるように艶がある低い声が響く。


「今から、お前は俺の恋人だ。なにがあっても守ると誓う」


──こい、びと? 私が、セイディーレの?

って、一体なにを言い始めるんですか!!

私はおそらく真っ赤になっているだろう顔で、口をパクパクさせるしかない。

唐突すぎて彼の意図を理解できず、抱きしめられたまま硬直していた、そのとき。


「セイディーレ閣下!?」


少し高めの、驚いたような男子の声が響いた。

腕の力が緩められた隙にバッと振り向くと、シャツの上にベストを身に着け、ブーツを履いた姿の男子が橋の向かい側にいた。

おそらく十四、五歳だろうその子は、整った中世的な顔立ちをしており、青い目をまん丸にして口はあんぐりと開けている。

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