華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
今の発言からすると、お金がなくて困っていたのは、ラシュテさん自身の金遣いの荒さが原因だったってこと? それなら有罪にされたって文句言えないじゃない!

裁判のときにも、罪を軽くするために家族を利用していたのかしら。本当にどうしようもない人だ。

真実が明らかになって呆れていると、セイディーレは口元にだけ冷笑を浮かべて告げる。


「今はお前の知らない土地で、皆幸せに暮らしている。喜べ」


それを聞いて、ラシュテさんはチッと舌打ちをしてのっそりと立ち上がると、うなだれながらどこかへと去っていく。

彼の事情は詳しくはわからないけれど、セイディーレに対して八つ当たりをしていたのは確かだろう。そんなのはお門違いだし、もう二度としないでほしい。

セイディーレのように人を裁く立場であると、こういった恨みを買ってしまうこともあるのだろう。だから、悪魔だという噂が流れてしまっているのかもしれない。

少し同情しながらも、セイディーレに促されて今度こそ邸宅に向かって歩き出す。

温かく逞しい腕の中はとても安心できて、緊張していた身体と心が次第にほぐれていくのを感じた。




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