華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「ちょうど起こそうかと思ってた。身体は大丈夫か?」

「あ、う、うん」


身体の心配をされると余計に恥ずかしいんですが……。

ベッドに腰かけ、縮こまる私の髪を撫でていた彼は、床に散らばった私の下着を拾って手渡してくれる。

おずおずとそれを受け取ると、セイディーレは今度はおもむろにドレスを手にしてこんなことを言う。


「着させてやる。こっちに来い」

「へっ!?」


そんなことをしてくれるとは思わず、声が裏返る。

ちょっと待って。ということは下着姿で彼の前に立たなければいけないわけで……それも恥ずかしいんですが!

心の中であれこれ言うものの、姿見の前で待つ彼に微笑んで手招きされたら断れない。

とりあえずささっと下着を身につけ、ドキドキしながら彼のもとへ向かった。


セイディーレが手にしていたのは、私がここへ来たときと同じ、動きやすく地味なドレス。

どうしてこれを選んだのかな、となんとなく不思議に思ったけれど、特に気にせずそれを着させてもらう。

私と、後ろで背中についているファスナーを上げようとしてくれている彼が、姿見に映る。

こんなことをしてくれるのも、さっきからたびたび見せる微笑みも、出会った頃からは想像がつかない。

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