華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
若干戸惑いつつ挨拶をする私に、ジルスター殿下はずいっと距離を縮め、ナチュラルに手を握ってくる。


「聞いていた通りのお美しい姫君ですね。お会いできて光栄です。今宵のパーティーではぜひ私とダンスに興じていただけませんか」


うわわわ、なんか馴れ馴れし……いや、とってもフレンドリーなんだけど!

にこにこしていて愛嬌があるものの、積極的な彼にどぎまぎしていた、そのとき。


「ジル」


聞き覚えがある声が殿下を親しげに呼び、さらに落ち着いた調子で言う。


「彼女は私の婚約者だ。気安く触れないでくれ」


そんな言葉が耳に入ると同時にそちらを見やった私は、姿を目にした瞬間、呼吸が止まるかと思った。

意識のすべてが、一瞬で彼に支配される。


「セ……セイ、ディー、レ……!?」


声にならない声が、私の口からこぼれた。

幻でも見ているかのように、尋常じゃなく驚いているのは、今の彼はあの黒い軍服姿じゃないから。

金の刺繍が施された紺色の胴衣を纏い、肩から王家の紋章が入ったサッシュをかけている。どう見ても王族の姿だし、それに……。

今、『彼女は私の婚約者だ』と言った、よね? 一体どういうこと!?

< 208 / 259 >

この作品をシェア

pagetop