華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
テーブルの木目に視線を落として言うと、マジーさんの表情もふわりと柔らかくなる。


「あぁ、わしもだ」


しっかりとした口調で返してくれて、私は少し嬉しくなって微笑んだ。

……って、なんで嬉しくなっているんだろう。よくわからない。

謎の心情に首を捻っていると、大きなあくびをしたマジーさんが、テーブルに突っ伏しながら独り言のように呟く。


「たとえ、悪魔の血を受け継いでたとしてもな……」

「え?」


──悪魔の、血?

気になりすぎるひと言を耳にした瞬間、身体の奥でなにかがドクンと疼きだす感覚がした。

それはおそらく、得体の知れない“恐怖”。

ハーメイデンでも、昔から悪魔の存在が信じられてきた。人を惑わし、堕落させ、あらゆる害を与える悪しきものが、この世のどこかに身を潜めていると。

実際、それに襲われたことがある人間が、ほかでもないこの私……らしい。

なぜ他人事なのかというと、私にはその記憶がないから。

幼い頃、城の外で遊んでいたときに何者かに襲われ、倒れているところを発見された。調査をしたところ悪魔の仕業だとわかったと、あとからお父様に聞かされたのだ。

< 48 / 259 >

この作品をシェア

pagetop