アフタースクールラヴストーリー
今日はここ最近で一番暑い日だったせいか、海に入って濡れた服はほんの数分で乾いた。
泣いていた副崎の様子が落ち着いたところで、僕は彼女から手を放す。
副崎は僕の手が離れると身体を横に向け、膝を抱えて座り直す。
何も話さない時間が少し流れた後、副崎はにわかに暖かな笑みを浮かべて話し始めた。
「私、人を好きになったのは初めてなんです」
「あ、ああ」
「今まで誰かを好きになったことがないから、どんなものを恋と呼ぶのか分かりませんでした。だけど球技大会の日に先生が私に『支えになる』と言ってくれた時、心がどきどきしたんです。そうして一人になった後に先生のことを考えたら、胸がはち切れそうになって、息ができないほどに苦しくなりました。でもそれが、何故か心地良かったんです。その時私、これが恋なんだって、人を好きなることなんだって分かりました。それからは先生のことが常に頭に浮かんで、先生の顔を見ると嬉しくなって、知らぬ間に笑っているんです。逆に先生に会えないと悲しくなって、勝手に先生に振り回されている自分がいて……」
副崎の言葉が止まる。
彼女の表情が、悔しさと怒りの籠ったようなものへと変わる。
「私の恋の何がおかしいの……」
「え?」
「生徒が教師を好きになって何がいけないんですか? 私は今まで、勉強も生徒会も自分なりに精一杯取り組んできました。久田先生を好きになった後だって、何一つ手を抜いたりしていません。それなのに、今回の件で皆から生徒会の仕事をちゃんとやってないんじゃないかって言われて、実は陰で先生と仲良くしていただけじゃないかって疑われて、弁解しても友達にも信じてもらえなくて……。私はただ、人を好きになっただけなのに……」
顔を伏せる副崎。
最後の一言が、彼女の嘆きの深さを物語っていた。
「副崎……」
今の僕が彼女にしてあげられることは一体何だろう。
というよりも、してあげられること自体あるのだろうか。
それでも僕は、何かせずにはいられなかった。
この時既に、僕の副崎に対する気持ちは、一人の生徒に対する気持ちをはるかに越えていた。
僕は副崎の元へとすり寄って、彼女の肩に手を回す。