副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「行きたいところは、決まった?」

 車に乗ってシートベルトをした彼が、口を開く。

「本当に、どこでもいいんですか?」

 遠慮がちに見上げると、彼は私の頭をポン、と撫でた。

「もちろん」

 先ほども感じたけれど、香水だろうか?

 爽やかな香りが鼻腔を擽り、私は思わず頬に熱を上らせる。

「海が……見たいです」

 私がそう言うと、彼はゆるりと口角を上げた。

「了解。いい場所があるから、少し遠出しようか」

「はい、ありがとうございます……」

 走り出した車には、有名な海外の女性シンガーの歌が流れ出す。

 その歌に耳を傾けながら横目に彼の姿を見つめると、その凛とした美しい横顔に、改めて見惚れてしまった。

 部屋着は何度か見たけれど、私服姿はまた新鮮だな。スーツ姿も素敵だけれど、今日のような格好もとても似合っている。きっと彼は、なにを着ていても様になるんだろう。

「明日奈」

 突然掛けられた声に、思わず跳ね上がりそうになりながら顔を正面へと戻した。

 ……見ていたの、バレちゃった!?
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