副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
 名残惜しい思いで海を出た私たちは、偶然見つけた海沿いのカフェで少し遅めのお昼ご飯を食べた。

 赤レンガの外観に惹かれて中へ入ったのだけれど、まるで百年前にタイムスリップしたかのような気持ちにさせられるレトロな店内に、私は思わず息を弾ませた。

 卵がトロトロのオムライスも絶品で、美味しかったな……。静かな雰囲気も気に入ったし、家から近ければきっと毎週のように通ったのに。

「本当に、ケーキはよかった?」

 前を見つめ運転する彼は、こちらを見ずに声を掛ける。

 私は膝の上に置いた小さめのケーキボックスから視線を上げ、彼の横顔を見つめた。

「はい。ケーキは持ち歩けないので。あの、これ、本当にありがとうございました」

 カフェのレジ前にあったショーケースにはたくさんのケーキや焼き菓子が並んでいて、その精巧な作りに思わず足を止められ眺めていると、それに気付いた彼が『夜に食べようか』とマドレーヌやフィナンシェが入った焼き菓子のセットを買ってくれた。

 色とりどりの景色があまりに綺麗だったから見惚れていたけど、食後だったのに、食い意地が張ってると思われたかな……。
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