副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「……副社長、あの、降ろしてください。このままじゃ、荷物も……」

 足元にあるキャリーケースを見ながら遠慮がちにそう言うと、彼はグッと顔を近づけて私を覗き込んだ。

 思わず仰け反ろうとするけれど、彼がそうさせてはくれない。

「嫌だ。荷物は後で取りに来るから、今は俺の腕の中にいてくれ。今は、どうしても離したくない」

 淡く囁かれて、私は溢れる愛情に胸を焦がされた。

 大人しく頷くと、彼は満足気に私の額に柔らかな感触と熱を落とす。

 そして駐車場に停められた車に乗ると、彼はひたすら安堵したように大きく息を吐きながらハンドルに突っ伏した。

「明日奈……」

 名前を呼ばれて、私は徐に彼の方へと視線を流す。それが絡み合うと、彼は切なそうに揺らした瞳で真っ直ぐに私を見つめた。

「お前がいなくなって、目の前が真っ白になった。頼むから、もう勝手にいなくなったりしないでくれ」

 頬に伸びてきた手に手を添えると、それは優しく私を包む。

 少し擽ったくて身体を跳ねさせると、彼はゆっくりと顔を近付けた。

 雨音がフロントガラスにぶつかる音を聞きながら、私たちは、どちらともなく唇を重ねる。

 すぐに離れると、彼は噛み締めるようにそのまま私を強く抱き締め続けた。
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