副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
 するとポトリと彼の両手がソファーに落ちる音がする。

 不思議に思い徐に腕を解いて彼の顔を覗き込むと、どこか遠くを見つめていたような彼の目が、少し遅れて私を捉えた。

 そして視線が絡んだ瞬間、その顔には恥じらいの色が溢れる。

「……えっ?」

 思わず驚きの声を上げると、彼は顔を歪めて口元を手のひらで覆った。

 初めて見るその表情に胸が一際大きく高鳴り、感じたことないほど高揚する。

 私がぼーっと見つめていると、彼は私の頭と背中に手を回し、強引にソファーに押し倒した。

 視界が回転して驚くけれど、それよりも、未だ目の前の彼から目が逸らせなかった。

「……頼むから、見るな」

 決まりの悪そうなその顔は、羞恥に赤く染まっている。

 私がそうさせたのだと思うとまた涙が出そうなほど嬉しくて、心に火が灯ったように温まった私からは微笑みが溢れた。

「大好きです。何度言っても、言い足りない……。恋をすることがこんなに幸せなことだなんて、知りませんでした」

 言葉にしないと、胸から零れ出てしまいそうになる。
< 185 / 196 >

この作品をシェア

pagetop