副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「あ、あの……助けていただきありがとうございました。それとシャツ、私のせいですみません」

 彼の腕から抜け出し深々と下げる。

 なにも反応がないのでゆっくりと頭を上げると、彼は真っ直ぐにこちらを見つめていて、視線が絡み合うとゆるりと口角を上げた。

「俺も、君と同じ」

 彼は、笑い混じりに呟く。

 私と、同じ……?

 言われた意味がわからなくて頭に疑問符を浮かべていると、彼は勢い良く噴き出した。

 そしてそれを隠すように口元に手を当てると、クックッ……と小刻みに肩を揺らしながら笑い始める。

 その姿を見て、余計に頭が混乱した。

 えっ? 私、なにも言ってないよね?

「あぁ、笑ってごめん。困ってるのがあまりにも顔に出てたから。……俺も君と同じ。得意じゃないんだ、こういう会は」

 一頻(ひとしき)り笑いようやく落ち着いたのか小さく息をついた彼は、くしゃりと目尻を垂らしこちらを見つめた。

「だから、お礼なんて言わなくていい」

 私が返答に困っていると、彼は「出ようか」と出口の方へと視線を流す。

 慌てて彼からカバンを受け取り首を一回縦に振ると、彼は再び小さく笑みを零し、徐に歩き出した。
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