副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「あの、お言葉ですが副社長、どうして望月なんでしょうか? うちには秘書室の有能なベテランたちも……」

 恐る恐る部長が口を開いた。

 本当にそうだ! 秘書室の彼女たちがいるのに、どうしてわざわざマーケティング部の私を……。秘書技能検定を持っている人なんて、きっと他にもいるはずなのに。

 まさかのファインプレーに、今は部長が輝いて見えた。

「私が自分の秘書に求めるのは、人を思った気配り、仕事に対する正しい姿勢、そして……なによりも真面目なほどの正直さです。確かに秘書室はありますが、私は部署など関係なくあなたが最も適任だと思っています」

 真っ直ぐこちらを見据える副社長。

 思わず胸がドキリと跳ねるけれど、私は大きく首を左右に振って気を確かに持った。

 だからって、私に突然秘書になれなんて、無茶苦茶にも程がある!

「望月!」

 一瞬仰け反ってしまうほどに険しい表情を浮かべる部長が、私の両肩を掴んだ。

 その俺に任せろ、と言いたげな目を見て、私はほっと胸を撫で下ろす。

 この人に、なにか一言言ってくれるんですね……! これでも入社から丸四年、一緒に同じオフィスで働いてきたのだもの!
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