副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「副社長が直々にこう言ってくださっているんだ! こんな名誉なことはないぞ!」

 …………んっ!?

「ぶ、部長!」

「お前はうちでも有能な社員だったから突然なことに困る部分も多いが、こちらのことは気にするな! これは立派な昇進だ。お前は、副社長のお力になりなさい」

「あの、私……!」

「来週から私も正式に本社勤務になります。そしたらよろしくお願いしますね、望月さん」

 副社長の長い手がこちらに伸びてきて、躊躇う私の手を、なぜが部長が取って副社長と硬い握手をさせられる。

 う、嘘だよね? 私、この人の秘書になるの!?

「…………は、はぁ」

 薄れゆく意識の中、ほとんど力が入らない口をなんとか開いた。

 不当だと訴えれば、この内示は覆(くつがえ)るだろうか? 頭の中に小さな希望が芽生えるけれど、未だ私の手を取る彼の底の見えぬ妖艶な笑みを見て、私は戦う前に戦意を喪失してしまう。

 きっと私は、とんでもない人に目をつけられてしまった。
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