副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「きっと今頃、秘書室たちは荒れてるだろうねぇ。なにしろプライドが高い人が多いみたいだし、秘書室の自分たちを差し置いて他の部署の人間が憧れの副社長についたとあっては……明日奈あんた、潰されるかもね?」

 数日前、トイレで胸を躍らせていた彼女たちの姿を思い返し、サーッと血の気が引いた。

 場合によっては、本当に潰されるかもしれない。

「どうしよう、真希!」

「どうもしない! 頑張るのよ、副社長秘書さん」

 語尾にハートマークがつきそうな甘い声でそう言った彼女は、イタズラに歯を見せて笑った。

 ……人事だと思って、完全に楽しんでる。

 急な異動はこの仕事ではよくあることだけれど、あとたった一週間で、今の仕事の引継ぎをして、新しい仕事の準備もしなくちゃいけない。

 『早急に目を通しておいてください』と最後に副社長に渡された薄緑の封筒を視界の端に捉えて、私は大きく息を吐き出した。
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