副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
 そんなことを考えていると、一階に到着したエレベーターの扉が開いた。

 見慣れたシャンパン色の光が眩いエントランスが目に映ると、それだけでひどく安堵する。

 人が一斉に降りていく中、エントランスにいた女性社員たちまで、彼のその堂々とした姿を目で追っていた。

 足を止めて、見惚れている人までいる……。

 彼のその想像以上の人気ぶりを目にして、やはり私はとんでもない人の秘書になったのだと改めて身の縮む思いをした。

「副社長、今日はありがとうございました」

 ビルを出て頭を下げると、彼は無表情で私を見つめたまま動かない。

 あれ? 帰らないのかな? 先に帰ってくれないと、私も帰れないんだけど……。七時に荷物の受け取りもあるし、そろそろ急がないと。

 精一杯の笑みを浮かべて見つめ返すけれど、彼は長い睫毛をたまに揺らし瞬きをするだけで、動かない。

「あの、副社長?」

「帰らないの?」

「えっ? あ、帰りますけど、副社長お先にどうぞ」

 平然とそう言われて、思わず目を見開いた。
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