副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「もう着く」

 十五分ほど走ったところで、彼が口を開く。

「は、はい……!」

 姿勢を正し窓の外を眺めていた視線を前へと流すと、車は建物の地下駐車場らしき場所へと入っていくところだった。

 あれ? ……こ、ここ!?

 入る前に一瞬見えた外観が、今朝まで暮らしていた社宅の寮とはかなり違って見えたのは気のせいだろうか?

 それよりも、もっとハイグレードな建物に見えた気がするんだけど……。

「副社長、あの……」

 彼は初めて来たにも関わらず、迷うことなくスムーズに車を停める。

「ここだ」

 それと同時にシートベルトを外す彼は、ふっと小さく息をついた。

「ここ、ですか?」

「あぁ。行こう」

 困惑して動かない私を見兼ねてか、シートベルトを外してくれた彼は、再び助手席のドアを開けると手を差し伸べてくれる。

 躊躇っていると、彼は優しく私の手を取った。
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