副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「そんなに気負わなくていい。君なら、きっと大丈夫だ」

 淡い声が、静かに部屋に響く。

 ――まただ。なんの根拠のない言葉に思えるのに、彼の言葉はとても私を安心させてくれる。

 どうして彼は、出会って間もない私をこんなにも信頼してくれるのだろう……。

 徐々に早くなる鼓動がこれ以上早鐘を打つ前に、私は予定で黒く染まった手帳に視線を落として気持ちを落ち着かせた。

 ……今はただ、仕事のことだけ考えないと。

「精一杯努めさせていただきます」

 深々と頭を下げて、私は会議の準備をしようと足早に奥の部屋へと向かった。

 彼のいる部屋と繋がる扉を閉めると、思わず背中を預けてほっと息をつく。

 お願いだから、これ以上惑わせないでほしい。

 漏れそうになるため息を飲み込んで、私は扉にコツン、と軽く頭をぶつけた。
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