副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「元気そうだなぁ、千秋くん」

 エントランスまでお迎えにあがった田代社長を副社長室までご案内すると、彼は入るなり副社長に飛びつく。

「あはは、田代社長。ご無沙汰しております。それにしても、いい加減千秋くんはやめてくださいよ。私ももう三十を回っているんですよ」

 それを苦い笑みで受け止める彼は、田代社長の膨よかな背中を宥めるようにポンポン、と叩いた。

 ……副社長を下の名前で君付けしているなんて、親子ほど年が離れていそうに見えるけれど、二人は本当に親しい間柄なんだな。

 副社長は困ったような笑みを浮かべていても、その表情からはどこか嬉しさが滲み出ていた。

 私はすぐに温めておいた急須で、熱めの濃いめの日本茶を入れると、田代社長が好きだというさくら堂の和菓子を準備して部屋へと戻る。

 すると二人は、向かい合わせのソファーに掛けて楽しげに談笑していた。
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