副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
「彼女は秘書の望月です。私が人選して、まだ違う部署から異動してきたばかりなのですが」

「望月と申します」

 深々と下げた頭を上げると、彼は無表情でジッとこちらを見つめていた。

 もしかして、値踏みされてる?

 思わず気圧されそうになるけれど、私はなにも言わず再度深々とお辞儀をして、そのまま部屋の隅へと下がった。

 するとそれを見た彼は、一瞬で緊張を解いたように顔を綻ばせる。

「うん、彼女はとてもいい秘書に育ちそうだな」

 上機嫌に呟いた彼は、豪快に膝を叩いた。

「そう思いますか?」

「そう思うからわざわざ手元に置いたくせに、とぼけおって」

 そんな彼の様子を嬉しそうに見つめていた副社長は、両方の口角を綺麗に上げて微笑む。

 ……すっかり試験に合格したような雰囲気になってるけど、これは一体どういうことなのだろう?

 居心地が悪くて眉を下げると、田代社長は言葉を続けた。
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