天使と悪魔の子
ーザァッ
急に何故か突風が吹いた。
そしてどこか大人しくなる市場。
なんだ、と不安になる。
「あ、あいつだ」
宙は慌てたように私の手を引くがもう遅い。
「何をしている」
細身のようでかなりしっかりとした筋肉、そしてその体格に相応しい大剣を背負った冷たい鉄紺色の目をしたアスタロッサが私を見下ろしている。
一声だけで、あっという間に心が冷たくなっていく気がした。
市場にいた周りの人々は大人はもちろん子供ですら跪いている。
今では私も姫ではなく四大天使、フレンチさんの部下だ。
さっと宙と共に跪いた。
「……」
彼は無言で剣に手を伸ばす。
私はじっと彼を見つめた。
今は死ねない、いくらアスタロッサ様でも私は立ち向かう。
「お待ちください。何をなさるおつもりです。失礼ながらこの御方はヴァレール神様の孫、いくら大天使様でも独断で殺していい御方ではありません。
それに今は翠の神殿、フレンチ様率いる戦士の一員です。もし彼女になにかあれば、私はもちろん翠の戦士が黙っておりません。」
宙……
彼は私を守ってくれている、それなのに何も返せていない。
「ふっ、我は死など恐れはしない。この神界の汚点を消せるのなら本望。」
彼はついに剣を抜いて私のすぐ近くの地面に刺した。
「汚点……?」
ービリッ
『……宙?』
宙の方を向くとなにやら黒い霧のようなものが彼の周りを渦巻き青い電気が彼から放たれている。
片目は空色から血色に変わり、神界にはそぐわないほどどす黒い何かを感じた。
『そ、宙』
「半端者のくせに、お前もこの女と同じだ。」
今にも殺し合いが始まりそうな険悪な雰囲気。
これは、だめだ。
『やめ「やめなさいっ!!」
……え
止めようとしたその瞬間、私ではない女の声が静まる市場に響く。
振り返ると綺麗な金髪の、儚げな彼女が立っていた。
「シーナ……!?」
一番驚いていたのは、アスタロッサだった。
シーナさんは私の血をわけた人だ。
「し、シーナだ……」
周りの人も少しざわめき緊張していた場が少し和らぐ。
一体どうしたというんだ。