fantasista 2









柊と一緒に実家へ行く。

あたしの実家は古びた賃貸アパートだ。

その前に停めた白色のアウディは酷く浮いて見えた。





「引くでしょ?

あんたの実家、豪邸だから」



ぽつりと呟くあたしに、



「引かねぇよ。

実家が豪邸とか、関係ねぇよ」



柊は言う。

そしておもむろにあたしの手を握りしめる。

強く、優しく。




「大丈夫だ。行くぞ」




柊に引っ張られ、古びた階段を軋ませながら上った。

そして……

「小川」そう表札の出た部屋のインターホンを、震える手で押していた。



< 279 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop