ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
それでもドアを半分だけ開けて、ドアノブを握って離さないでいるのは、峯岸が訪ねて来た理由がわからないからで、嬉しい気持ちとなぜ今頃という疑問で彼を見つめた。
「…何の用?」
美姫の可愛くない言い方に、峯岸の片眉が上がる。
「話がある」
「何のお話ですか?」
「急に他人行儀な話し方をするなよ」
「…他人だと思いますけど」
「他人じゃないだろう」
警戒していた美姫の体を簡単に引き寄せ抱きしめられた行為に嬉しさがこみ上がるが、この腕から離れられない気がして峯岸から離れようと、男の胸を叩き抗議した。
「いや…離して」
「暴れるな……お腹の子に何かあったらどうするんだ」
知られているなんて思っていなかった美姫は、驚いた表情のままそのまま固まった。
「どうして?」
「どうして知ってるか?って知りたいのか?」
峯岸に抱きしめられたままコクンと頷く美姫。
「そんな事、今はどうでもいいんじゃないのか?とりあえず、このまま外にいたら体が冷えるぞ」
美姫の体をクルッと方向転換させ、肩を抱きながら峯岸も一緒に玄関に入ってドアを閉めていた。
簡単に入られてしまった事に、美姫は動揺する。