ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

「ちょ、ちょっと、どうして峯岸さんも入って来るの?」


「蒼斗だ」


「はあっ⁈」


「話があるって言っただろう?」


玄関に美姫を置いて、峯岸は先に部屋に行ってしまった。


なんなのよ…


峯岸の後をすぐに追いかけるが、すぐその男の背に部屋の入り口が塞がれていた。


「引っ越しするのか?」


「あっ……『浜田と結婚するからっていう嘘は通用しないからな』」


頭に過ぎった嘘を言われた美姫は更に動揺し、峯岸がその間ダンボールを物色しているのが視界に入っているに関わらず、身動き出来なかった。


どうして?


「いつ、引っ越しなんだ?」


「えっ、月末」


「ふーん…とりあえず必要な物をこのダンボールに詰めろ」


せっかく詰めてあったダンボールの中身を空にし、そのダンボールを部屋の中央に置いた峯岸は、動こうとしない美姫に振り返る。


「ほら、お前がしないなら俺が勝手にするぞ」


下着類の入っていたダンボールからブラジャーを1つ
手に持つ男の姿に、赤面しながら慌てて取り返した。


「触らないで……話があったから来たんじゃなかったの」


「あぁ、そうだった。とりあえず座れよ」
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