ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
ベッドの上に座った峯岸と距離を置いて床に座った美姫に、男は目を細めチッと舌打ちし美姫を抱き上げベッドの上に座らせた。
そして、自分は美姫のすぐ側で床に胡座をかいて座り、美姫の手を握ってきた。
「なに?」
手を握られた事への抗議と話の内容を催促する。
「…浜田と別れた事も、妊娠してる事も知ってる」
先ほども同じような事を言われて動揺し冷静に考えなれなかったが、峯岸の落ち着いた声と美姫を見つめる目に、全てを知って来たのだと気がついた。
「だから?なに?」
「お腹の子は俺の子なんだろ」
まさか…おろせという為に来たの⁈
だから、荷物を詰めろって言ったの⁈
「峯岸さんの子じゃない、私の子なの。だから、おろさない。迷惑かけないから放っておいてよ」
おろせと言われた訳じゃないが、感情が高ぶり涙を流しながら声を荒げた。
そんな美姫を膝立ちした峯岸が抱きしめて、落ち着かせる為に背と後頭部を何度も宥めるように撫でる。
「大丈夫…産んでくれ。産んでほしいんだ…」
「おろせって言わないの?」
思ってもいなかった峯岸の返答に、確認せずにいられない。
美姫の涙を拭いながら、峯岸が頷いた。