ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
「おつかれ…」
そう言って涙を浮かべ抱きついて労ってくれるのは、早希だけだった。
上司に挨拶しても、仕事の片手間に手のひらだけでの挨拶に寂しさを感じていた。
これが、社会の厳しさなのだと痛感させられるが、今は1人じゃない。
蒼斗がいてくれる。
蒼斗の存在がこんな心強いと、あの時、意地を張っていた自分に言ってやりたい気分だった。
「蒼斗に会わせてくれて、ありがとう」
「私じゃないのよ。浜田さんが彼をけしかけたの。会ったのは偶然だったけどね、最初からどんな手を使っても峯岸さんに美姫の妊娠を知らせて会わせるつもりだったみたい。私は、美姫の気持ちを尊重したけど、彼は違ってた。男と女の考え方の違いなんだと思う。でも、彼のおかげで今、美姫は幸せだよね⁈」
「うん、感謝してる」
「それなら、必ず幸せになってよ。浜田さんと確認しに行くからね」
「うん、この子に会いに来てね」
本当に、2人には感謝しかない。
蒼斗に会わなければ、こんな幸せな日を過ごせなかっただろう。
そう思うと、意地を張っているのがバカらしくなる。
早希と一緒に会社を出ると、会社前に数人の女性社員の団体が出口を塞ぐように集まっていた。