ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

だが、いざ2人きりになってしまうと、何を話していいかわからない。


共通の話題といえば、昔、同じ車両に乗っていた事だが、それらしい事をふっても話が膨れなかった。


そうなると、


あの時、恋愛対象外だと思わずに声をかけていたら…


美姫が、今時の女子高生のように積極的だったなら…


浜田より先に再び出会っていたら…


いくつもの後悔が頭の中をよぎっていく中、美姫のスマホが鳴った。


相手は浜田だった…


相手に見えもしないのに恋する女の顔になり、声も峯岸と話していた時とは違い、少し高いトーンにイラっときて自分の存在が彼女から消えた気がした。


電話の向こうの相手より、すぐ側に自分がいるのに彼氏という存在には勝てないのか?


男の醜い嫉妬だった…


彼女の気を自分の方に振り向かせたくて、手を繋いだ。


戸惑い、驚く美姫…だが、振りほどこうとはしない。


電話の向こうの男に優越感を抱いていた時、峯岸と手を繋ぎながら、彼氏に愛のセリフを吐く美姫は…実は、したたかな女ではないのか?


彼女の言葉、行動全てが計算されたように見えてしまうと、電話越しに1人だと言い切る美姫を揶揄するように皮肉られずにはいられなかった。
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