ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
『うそつきだね』
説明できないが、多分、プライドが傷ついたのだ。
峯岸は、自分の容姿にそこそこ自信を持っていた。
自分が知っている女は、昔から峯岸を見れば彼氏が隣にいようが視線を送ってくる。
職場でも女達は裏表を使い、峯岸に女をアピールしてくる。
そんな女達を仕事でもプライベートでも、容姿を使いうまく利用してきた。
美姫は、自分に気があると思っていただけに、目の前で彼氏に『早く、浜田さんに会いたいです』と告げられるとは思ってもいなかったのだ。
峯岸の心は浜田に嫉妬し、美姫の心を自分に向けさせたいという思いから、繋いでいる手をぎゅっと掴み人通り少ない物陰に美姫を連れ込んだ。
美姫を抱きしめたまではよかったが、側で彼氏に愛のセリフを伝えていた女をどう振り向かせていいかわからなくなった。
見つめていた視線も、振りほどかない手も、過去の淡い恋心から来ているだけなのかもしれない。
そう思うと、峯岸の自信なんて簡単に崩れてしまう。
だから、美姫の心を探るしかなかった。
脅すような事なんて言いたくなかったが、揺さぶる事で美姫の心中を聞き出そうとしたのだ。
だが、美姫は口を閉ざしたまま抱きしめた腕から離れてしまう。