ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

そう言うと、美姫は下唇を噛み悲しい表情を浮かべる。


そんな顔をさせたかった訳じゃない。


無意識に彼女の名を呼び捨てで呼んでいた。


『美姫』


峯岸は、美姫がほしい。


それなら、どうすれば美姫を困らせず手に入れられるのだろうと考えると自然と出てきた言葉が


『…俺ともつき合うか?』だった。


ほしかったものを手に入れたい欲求


欲求が満たされれば、いらなくなる。


いつもそうだ…


かなわないと分かれば、すぐに冷めてしまう。


こんな性格だから恋人とは続かないし、恋愛に向いていないのだ。


彼氏がいる美姫


だが、この女がほしい


だからといって、彼氏から奪いたい訳じゃない。


だから、言い直す…


『いや、違うな…俺と背徳感を楽しんでみるか?決めるのはお前だ…』


ずるいやり方だ。


恋愛ゲーム…ゲーム上に乗るのも降りるのも自分次第だと美姫に決めさせるのは、別れが前提だからだ。


どちらかがピリオドをうつまで楽しまないかと誘惑する卑怯な言葉。


浜田が好きなら、断ればいい。


それなら、きっぱり諦められる。


だが、何も言わない…その時点で美姫に迷いがある証拠だった。
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