ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
それなら少し背中を押してやれば頷くのでないのか⁈
『浜田にばれなきゃいい』
そうだ
ばれなきゃ問題ないはずだ。
だが、それでもまだ、頷かない女。
何を迷う?
あと一押し何かが足りないらしい…
*
「峯岸さんに惹かれているのはバレてるよね。だから、そんなこと言うんだよね…でも、私、浜田さんを裏切れない。……ごめんなさい」
美姫の返事が予想外の答えだったらしく、言葉が出てこないらしい峯岸は、表情を険しくさせた。
心は今も揺れ動いている。
諦めないでほしいと思ったのも…
もっと、強引にきてほしいと思ったにもかかわらず、踏み込む勇気がないからだった。
「…わかった。潔く諦めるから安心しろ」
峯岸の腕の中から解放される。
離れた距離に寂しさが募り、無意識に峯岸のスーツの裾辺りを掴んでいた。
目を見開き驚く男と視線が重なる。
「…お前は一体どうしたいんだ?」
スーツの裾辺りを掴んでいた手を掴み、また美姫を引き寄せ抱きしめた峯岸。
「わからないの…浜田さんを裏切れない気持ちはあるのに、峯岸さんと、このまま別れたくない。高校生の頃ずっと峯岸さんが好きだったの」