ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
と、後で後悔するなんて思わずに言ってしまっていた。
浜田と一緒に店に戻ると、峯岸が何食わぬ顔をしてこちらを見ていた。
席に着くなり、浜田は両手を合わせ男に謝る。
「峯岸悪い」
「イヤ…美姫ちゃんだっけ⁈大丈夫?」
「…はい」
先ほどまで肩を抱き寄せ耳元で『美姫』と艶めかしく名を呼んだ男が平然としている姿に、美姫の表情は曇った。
どうして平気でそこに居られるの?
浜田は美姫の声のトーンの低さに、機嫌が悪くなったと勘違いする。
「美姫、ごめん。言い忘れてた…今日は峯岸も一緒にって誘ったんだ」
会いたいと言ってきたのは浜田なのにと思ってしまう。
それが表情に出ていたのだろう…美姫の耳元に小声で経緯を話す浜田。
『前回の事があるから声をかけられて誘わない訳にいかなかったんだ。ごめん…埋め合わせは今度するから今日は3人で飲もう』
本当に優しいというか、お人好しな浜田にイラッとする美姫。
こんな事になってるなら、引き止めなければいいのに…
あのまま、帰るべきだったと後悔した。
目の前の峯岸を恨めし気に見つめても、気にも止めてない様子が憎らしかった。