ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
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美姫が不機嫌なのはわかっている。
だが、浜田とデートと聞いて2人きりにさせたくないと思ったのだから仕方ない。
店に入って来た美姫は、峯岸がいる事を忘れてたかのように驚いていた。
席に着き、最初だけ何か言いたげに見つめてきたが素知らぬふりを決め込む。
そうすると、美姫は峯岸を見ようともせず浜田ばかり見ている。
浜田といたら目の前の存在の自分は、忘れらてしまうらしい。
面白くない…
つい1時間程前まで、肩を抱くとすり寄って抱きついてきた女なのだろうか?
甘い言葉を囁けば、頬を染めていた女なのか?
自分の腕の中にいた女が、今は浜田に肩を抱かれ寄りかかり、時たま甘えた仕草で彼女の顔をしている。
平静を装っていても、ムカムカと腹が立ってくる。
一体、誰に?
そんなのわかりきっている。
無視されている自分に腹が立っているのだ。
こっちを見ろよ!
わざとテーブルの下で美姫のつま先を突く…
それでも、こちらを見ようともしない。
峯岸と話してる浜田を見つめているか、時たま視線をテーブルに移し、峯岸の首から下は視界に入れても、顔を見ようとしない美姫。