ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜
どちらかなんて、今更考えても仕方ない。
間違いだとわかっていても、止められない思いがある。
峯岸に一度だけでも抱かれたい…
彼の温もりを感じ、熱い吐息を感じ、峯岸の熱い欲望を感じたいのだ。
見ているだけで満足していたあの頃には考えられなかった大人の関係になれば、きっと、この恋は終わる。
それでも、後悔だけはしたくない。
背徳を楽しむだけで、美姫を好きじゃなくても…
それでも構わないと思ってしまったのだから…
峯岸の誘惑という甘い罠に堕ちてしまった。
呼び鈴の音がなり、慌てて玄関に駆け寄り鍵を開けた。
ドアを開けると、そこに立つ男は別れた時と同じスーツ姿のまま、髪も服装も乱れていない。
ソワソワと落ち着かず1秒でも早く会いたくて短い距離を駆け寄ったというのに、無表情で落ち着いている峯岸との間に温度差を感じた。
「峯岸さん?」
首を少し傾げ男を呼んだ。
それでも、ドアの向こうからこちら側に入って来ようとしない男に近寄り、ぎゅっと抱きついていた。
頭上で、何かを吹っ切るように大きく息を吐いた男が、美姫を抱きしめ中に入って来ると、押さえていたドアが閉まる音と同時に美姫の唇を塞いでいた。