神木部長、婚姻届を受理してください!
「おはよう。沙耶ちゃん、金曜日大丈夫だった? お母さん、心配してたでしょう?」
「おはようございます。はい…大人なんだからしっかりしなさいって叱られちゃいました」
月曜日に出勤すると、とても心配そうな表情を浮かべた香織さんが私に声をかけてきた。
飲み会のあった金曜日、私は結局頭痛と睡魔に勝つことができずにその場で眠り込んでしまったらしく、香織さんと旦那さんが家まで送ってくれたそうで。翌朝目を覚ますと、母にこっ酷く叱られてしまった。
「香織さんにも、旦那さんにもご迷惑おかけしてしまってすみませんでした……」
頭を下げるわたしの頭上から、香織さんの「いいわよ」という優しい声が聞こえてくる。顔を上げると、香織さんはまた笑顔で口を開いた。
「私のことなんかより部長にお礼言ってきなさい。部長、すごく心配してたから」
「えっ!本当ですか?」
「本当よ。店内で沙耶ちゃんが寝言なのか意識があったのかは分からないけど〝頭痛い〟とか〝吐いちゃう〟とか言ってた時、ずっと背中さすってくれてたんだから」
香織さんの言葉に、私は大きく目を見開いた。驚いてすぐに声も出なかった。
「部長のところ、行ってきます」
「はい。行ってらっしゃい」
急に押し寄せてきた大きな嬉しさと、心配をかけてしまった罪悪感とで複雑な感情になった私は、ひとまず部長のところへ行くと香織さんに告げると、部長室へ向かった。