神木部長、婚姻届を受理してください!
「失礼します」
基本的には開放されている入り口手前で小さく頭を下げた。
「おはよう」
私が部長室へ足を踏み込むと、部長はいつもと同じように挨拶をした。私もいつものように「おはようございます」と返事を返すと、何と話を切り出そうかを考え始めた。すると。
「体調、大丈夫か?」
意外にも、先に話を切り出したのは神木部長の方だった。
「あ、はい。ちゃんと元気です!」
部長が心配をしてくれているのが嬉しくて、笑顔でそう答えると、部長は「そうか。それは良かった」と行って少しだけ口角を上げた。
「あの、ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。あと、背中さすって下さってありがとうございました」
段々と緩みかける頬の筋肉。それを何とか抑えて、ポーカーフェイスを保つ。部長は、私の言葉に一瞬驚いたような顔をした後「林田か」と一人呟く。
「もう少しお前は、後先を考えて行動しなさい。それと、他の人の言うことを安易に間に受けないように」
部長が呆れたように言う。私の視線は、部長に迷惑をかけてしまった事を悔やみ、どんどんと下がっていく。
「すみませんでした」
「分ったなら宜しい。これからは気をつけて。女の子なんだから、何かあったら危ない」
デスクの上の資料を揃えながらさらりとそう放った神木部長。私は、部長の言葉に嬉しさとそうじゃない気持ちとが複雑に混じり合った。