神木部長、婚姻届を受理してください!


「おはようございます」

 結局、一晩ぐだぐだと考え続けて一睡もできなかった。一晩考えたにも関わらず、部長への気持ちを断ち切る方法はどうしても見つからなかった。

 いつもなら早起きをしてコテで巻いている髪も、念入りに時間をかけてしているメイクも今日はできなかった。する意味なんて全く無いような気がして、髪はブラシをとおしただけ。メイクも、いつもより手抜きのまま会社へ出勤した。

「あら、沙耶ちゃん。おはよう。髪がストレートだし、疲れた顔してるみたいだけど……どうしたの?」

 香織さんの席の横を通ると、彼女は驚いたような表情をこちらに向けた。

「香織さん……あの、お昼にお話聞いてもらってもいいですか」

「もちろん。お昼、いつものカフェでランチしましょう」

「はい。ありがとうございます」

 香織さんに軽く頭を下げた私は、そのまま自分のデスクへと向かい腰をかけた。そして、毎朝恒例になっていた部長への挨拶をする事もなく、すぐに仕事にとりかかった。


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