ここにはいられない

「あれ?松田さん、おはようございます。今日検診受けられるんですか?井上先生にはちゃんと相談されました?」

多くはないけれど、疾患があるとわかっている人には個人的に声を掛けてみる。
何かあってからじゃ遅いもの!

「おはようございます!ちゃーんと許可取って来たよ。大丈夫、大丈夫。それより早くご飯食べたい」

「あはは、そうですよねー」

受診票をひらひら振って進んでいく松田さんを見送りながら、今朝食べた味気ない朝食のことを思い出した。

朝の5時30分受付開始なので、私たちは朝5時に集合だった。
検診場所は市役所の庁舎ではなく、少し離れた地区公民館なので、いつもより通勤時間もかかる。
だから私がモサモサとただのトーストとコーヒーを食べたのは朝4時だったのだ。

千隼には事情と朝ご飯を用意できないと伝えて、「ごめん」と謝った。
けれど、

「別に。今までずっと一人だったんだから大丈夫」

と残念がる様子もなく言われて、ガッカリしたのは私の方だった。
朝ご飯の時間を楽しみにしていたのは、私だけだったのかなって。

確かに千隼は「朝食を食べると調子がいい」とは言ったけど、その要件に私は含まれていなかった。

千隼との生活もあと1週間で終わりなのに。



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