ここにはいられない



炭酸が飲みたい!!

そう思ってパッチリ目が覚めたのは朝4時過ぎ。
早く寝たせいだけでなく、妙に強い欲求で眠れなくなってしまった。

炭酸が飲みたい!どうしても飲みたい!今飲みたい!

コンビニまでは車で5分だけど、一番近い自動販売機なら数十m。
しばらく布団の中でモゾモゾ迷った挙げ句、Tシャツとパンツに着替え、お財布だけ持って襖を開けた。

と同時に、隣の襖が開いて「うわっ」と声を上げてしまう。

「おはよう。・・・トイレ?」

なんだか久しぶりの千隼は、寝起きなのでぼんやりとした声でそう言った。


昨日の夜、炊き込みご飯とけんちん汁とちんげん菜の炒め物、デザートにグレープフルーツまで剥いておいたのに、千隼の帰りは遅くて、私は一人でそれらを食べた。
帰ってくるのを待って温め直してあげたい、と思っていたのに、早朝出勤した上に精神的に疲れ切っていた私は、結局顔を合わせる前に眠ってしまったのだ。

昨日の朝は私が早出だったため会えず、職場で一瞬顔を合わせただけ。
だからこうして一緒に住んでいながら、ほとんど丸1日以上会っていなかった。

「おはよう。そうじゃなくて、なんだかどうしてもね、炭酸が飲みたくなっちゃって」

私が動くたびに「トイレ?」って思われるのは恥ずかしいんだけど。
「もう起きたの?早いね」と言って欲しい。

ところが千隼は眠そうだった目をパチッと見開いた。

「・・・俺も」

「え?まさか炭酸?」

「自動販売機に行こうと思って」

「ええー!私も!」


なんだろう?
何の魔法?



< 64 / 147 >

この作品をシェア

pagetop