ここにはいられない


「・・・・どんな人ですか?」

「どんなって、友達の友達なんでしょう?」

「そうですけど、仕事中のことは知らないなーって」

登庁時と外出する時くらいしか見かけないし、あと会うのは給湯室がほとんど。
千隼が働いている姿は見たことがない。

菊池さんはキーボードを叩くペースを変えないまま器用に会話を続ける。

「仕事の覚えはよかったよ。要領も、慣れるに従って良くなってた。だけど不器用」

「要領いいのに不器用なんですか?」

「うん。面倒な仕事ばっかり回ってきて抱え込むタイプ。母子家庭で一人っ子って言ってたから、そういう影響があるのかな?なまじ仕事できるから周りも任せちゃうんだよね。それを黙々とやり続けるから、『この人、突然自殺したりしないかな?』ってちょっと心配だった」


面倒事を引き受ける、ということについて、私は誰より面倒をかけている・・・。

やっぱりそうなのかー、と心の中で頭を抱えた。
無愛想だからわかりにくいけど、千隼は極度のお人好しだ。
しかも無愛想だからそのことに気付いてもらえない。
一体何が彼のモチベーションになっているのだろう、と疑問に思う。

「自殺を心配したことはないですけど、人生楽しいことってあるのかな?とは思いますね」

「だよねー。でも志水さんみたいに庁内にちゃんと友達もいるんだから、心配ないかな」

「・・・そうですね」

余計な負荷を掛けている身として、これ以上は何も言えなかった。




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