今年の夏もキミを想う…。

宮崎の感じている憂鬱など完全無視で、彼女は笑顔で頷き、腕を引いたまま部屋を出る。


「宮崎くん、暑いのは嫌なんでしょ?あそこなら、今の時期、緑の葉っぱが生い茂っているから、きっと日陰になっていて涼しいよ」


確かにそうだが、問題はそこではない。


「その道中が一番問題なんだよ。遠いし、日当たり良すぎだし、おまけに舗装なんてされてないから自転車だとお尻が痛くなるし」


ブツブツと文句を垂れる宮崎に、彼女は振り返って口角を持ち上げる。

そのわざとらしすぎる微笑みに、宮崎は何だか凄く嫌な予感がした。


「あのヒロインね、本当は……」

「わかった!悪かった!!」


慌てて遮った宮崎に、彼女はニコッとご機嫌な笑顔を残して前に向き直る。

ため息をこぼしつつ、チラリと視線を向けた先は、未だ掴まれたままの腕。

ここまで来たら、もう外に遊びに行くことに否定的ではなかったのだが、手を離されてしまうのがほんの少しだけ寂しくて、宮崎はあえてやる気のない風を装ってそのまま家を出た。

掴まれた腕が熱くて、その熱にまた胸がドキドキする。

外に出れば、セミの声が忙しなく、むわっとした熱気が一気に全身を包み込む。

よく晴れた夏の日に、彼女は振り返って幸せそうに笑った……。
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