今年の夏もキミを想う…。
「別に俺は、特別先輩のイメージを壊すようなことはしませんけど。てか昔から、そんなことしたことありませんけど。いつだって、先輩が勝手に自滅してたんじゃないですか」
「自滅なんかしてないよ!したことないよ!!オレの中にはもともと、優しくてスマートなお兄さん的部分が隠れてるんだ。それを呼び覚ませばいいだけなんだから、自滅なんか絶対しない!」
二回も“自滅”と口にしているところに、既に危険な匂いを感じるが、当の本人は自信満々だ。
そうやって男二人で顔を付き合わせ、こそこそと小声での言い合いを続けていたところに
「なにやってんの……二人して」
エプロンの紐を後ろで蝶結びにしながら、怪訝な顔の和果子が現れた。
あれやこれやと言い訳する宮崎や、慣れた様子で今日のファッションを褒めちぎる高知を一蹴し、最終的には「後輩が頑張ってるのに、先輩が二人してサボってどうする!」と一喝され、首根っこを掴まれるようにして二人は家庭科室に連行された。
言うまでもなく、ドアが開いた瞬間、男二人の襟元を掴みあげている勇ましい和果子の姿は、その場にいた人達の視線を一心に集めた。
笑いと、冷やかしと、呆れたような声が飛び交う中、柚花は野菜を切っていた手を止めて、チラリと視線を向ける。
パッと見はシュンっとうなだれながらも、どこか嬉しそうな顔をして和果子に連れられてきた高知の姿を、柚花はちょっぴり寂しそうに眺めていた。
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