今年の夏もキミを想う…。

しばらくして、目の前になみなみと水の入ったコップがそっと差し出される。


「ああ、ありがとわか……」


コップを受け取って顔を上げると、そこに立っていたのは、和果子ではなく柚花だった。


「あっ、えっと……すいません。和果子さん、来る途中で別の先輩方に捕まってて、それで、わたしが代わりに」


申し訳なさそうに俯く柚花に、宮崎は笑顔で首を横に振る。


「ありがとう、柚花ちゃん。この通り、高知先輩がチョコレートで酔っ払っちゃって、困ってたんだ。だから助かったよ」


「いえ、そんな……全然」とぽそぽそと恐縮しながら、柚花ははにかむように笑って、ポツリと呟く。


「高知さん、昔からお酒に弱かったから……」

「そうなの?」

「はい……匂いを嗅ぐだけでもダメなんです。直ぐに酔っ払っちゃって」


柚花の話を聞きながら、宮崎は自分の肩に頭を乗せていつの間にか眠りこけている高知を眺める。

柚花もまた、気持ちよさそうにすやすやと寝息を立てている高知の寝顔をジッと見つめていた。
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