俺様ドクターに捕獲されました
「俺のこと、知ってる?」
「はい、リハビリテーション科の主任さんですよね」
「そう、松浦です。うれしいな、知っててくれてたんだ。ねえ、天野さんてさ……」
ずいっと顔を近づけてくる松浦さんに、少し驚く。なんか、距離が近くないか?
「ちょっと、松浦さん。天野さんは宇佐美先生の彼女さんなんだから口説いちゃダメでしょ」
あまりの距離の近さに引いている私に気がついたのか、飯嶋さんが助け舟を出してくれる。
が、松浦さんはまったく引いてくれなかった。
「えー。でも、付き合ってるわけじゃないんでしょ? ただの幼なじみって聞いたよ。な、井坂」
「うん、そう聞きました。なので、まあ……問題ないんじゃないですか。松浦さんがどうなろうと俺の知ったことじゃないし」
いや、問題はある。私、こういうグイグイくるチャラそうな男の人は苦手なんだってば。
「だって。ね、里衣子ちゃんて呼んでいい?」
「え、いや、あの……」
なんとも答えられず口ごもると、松浦さんは爽やかな笑顔を浮かべたままテーブルの下で私の手を握る。
ヒーッと心の中で悲鳴をあげながら、固まる私に気づいているのかいないのか。彼はさらに距離を詰めてきた。