俺様ドクターに捕獲されました


今度は実際に「ヒッ」と小さく悲鳴を漏らした私の手から、松浦さんの手が離れた。


ホッと息を吐く私と松浦さんの間に、誰かが強引に割り込んでくる。


狭い空間に無理やり身体を押し込んできたのは、どうやら飲み会の参加者のひとりらしい菅谷先生だった。


「ちょっと、ちょっと松浦くん。この子はダメだよ。宇佐美先生の婚約者だって知ってるでしょ?」

「あ、邪魔しないでくださいよ、菅谷先生。だって付き合ってないって本人から聞きましたよ」


助かったと握られた手をなでていると、クルリとこちらを振り返った菅谷先生がジロッと私を睨む。


「……言っちゃったんだ。俺の忠告、忘れたの?」

「だ、だって……本当のことですし。むこうも、誤解……されてたら困ると思います」


どうにもふたりが抱き合っている光景が頭から離れなくて、唇を尖らせる私に菅谷先生は呆れた顔でため息をつく。


「この子が、宇佐美先生のお気に入りなのは本当だから。手、出さないほうが身のためだよ。なので、今日は天野さんは俺が独占します」

「は!?」

「えー、ずるっ!」

「俺ならシャレで済むけど、松浦くんじゃそうはいかないから。悪いこと言わないから、この子はやめときな。ヘタに手出したら多分、社会的に抹殺されちゃうよ。じゃ、幹事さん、始めて」



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