俺様ドクターに捕獲されました


気づけば思っている以上に、酔いが回ってしまっていた。


身体がフワフワして、気分が高揚しているのが自分でもわかる。もう、立派な酔っ払いだ。


「で、天野さんさ。優となにがあったの?」

「……どうしてですか?」


せっかく彼のことを忘れていたのに名前を出されて、ムウッと唇を尖らせる私に菅谷先生はため息をついた。


「わかりやすいなぁ。なにがあったの? お兄さんに話してみなよ」

「なにも、ないですよ。優ちゃんはいつもそう。思わせぶりなことばかり言って、私なんて眼中にないくせに。いつも綺麗な人侍らせてデレデレしてるんだから」


口に出したら余計に腹がたって、持っていたグラスの中身を一気に煽る。


「おかわりください」

「こらこら、もうやめといたほうがいいよ。ほら、ウーロン茶にしなさい。にしても、優がデレデレ? 俺の記憶の限りじゃ、あいつが女連れてるのなんて見たことないけどな。正直、女に興味ないのかと思ってたわ。だから、天野さん連れてきたときに、本命がいたんだなって納得したんだけど」

「なんですか? 本命って。そんなわけないですし。好きって言われたこともないですし、いつも“もの”扱いで。今日だって、あの女医さんと抱き合って……」


お酒のせいか、気持ちの制御ができなくて目に涙が浮かぶ。


ずっと気づかないふりをしようとしていた。

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