俺様ドクターに捕獲されました
そのときのことを思い出すと、目に涙が浮かんでくる。泣くのは卑怯だと目に力を入れるが、目尻に溜まった涙が耐えきれずにポトリと地面に落ちた。
「私には友達を作ることも許してくれなかったくせに、自分はいつも綺麗な人を取っかえひっかえ隣に置いて。優ちゃんの女好き!」
「……っ! ちがっ! あれは、尊が……」
彼がハッとすると同時に、なぜか菅谷先生もビクッと身体を強張らせた。
「は? 天野……? あ、ええ!? 里衣子ちゃんて、もしかしてあの天野の妹!? に、似てないよ。俺と全然似てない。あんな悪魔と一緒にしないで!」
え、うちの兄、菅谷先生になにかしたんですか?
驚愕している菅谷先生に私も驚いていると、いつの間にか近づいていた彼に腕を掴まれる。
「お前は、誤解してる。いいから、帰るぞ」
「やだ! 今日だってあの美人の女医さんと抱き合ってたじゃない! こんなふうに! 」
「うおっ!」
ブンッと勢いよく彼の腕を振り払って、あのときの女医さんのように菅谷先生の首に手を回す。菅谷先生も彼のように私の腰に手を回した。
「人のことを自分のもの扱いするなら、優ちゃんも私のものになってよ」
感情をコントロールすることができなくて、子どもみたいにポロポロと涙がこぼれる。自分でも、なにを口走っているのかよくわからない。